城の三条件

お城というのは憧れです。日本の城も、平和な時ではなく戦乱の世にできたものなんか見ますと、実に面白い工夫が各所に凝らされていて、当時この城の設計をしている時にどんな会議が繰り広げられたか想像するとわくわくします。当然ながら西洋の城塞にも実に様々な工夫が凝らされています。

まず、城塞に必要なものは大きく言って三つあります。一つ目は高さですね。これは自然の高さ、つまりフランスのケリビュス城のように山頂に立っているだとか、あるいは盛り土によって人工的に作り上げた高さか、どちらでも構いませんが、高い所に立っていることは城塞にとっては大事な一つの条件でした。高い所に城塞があれば、下にいる敵に矢を射かけることができますし、敵軍の配置状況や周囲の様子などを楽に見て取ることができます。

二つ目は城壁です。石づくりのイメージが強いですが、土や木材でも作ることができます。壁を作ることで侵入を防げますし、また攻囲軍が中の様子をのぞき見るのも妨げられます。城壁の上には板囲いというのがありまして、これは城壁の基部にもぐりこもうとする兵士への対策ですね。板囲いの底には穴がありまして、そこから熱湯なんかをかけて、城壁を崩そうとする兵士を撃退するわけです。

三つ目が障害物ですね。お城のイメージには水をたたえたお堀の中に立っていて、入口には跳ね橋がある、みたいなものが典型でしょう。実際には水が入っていない場合もありましたけれど、堀があると攻囲軍にはかなり厄介なのです。破城鎚や攻城塔なんかの攻囲戦用兵器がお堀があると城壁に近づけませんし、はしごをかけて城壁を登るという手もあるんですが、兵士ははしごを持って堀をえっちらおっちら渡らなければならず、そんなことをしている間に防衛側の弓兵に射殺されてしまいます。

また射界というのも重要視されました。つまり、お城に死角を作らないということですね。攻囲側がどこから攻めてきてもきちんと監視することができ、射手でもって対抗できるようにすること。これを考えてお城は建設されたのです。

このように、お城には色々と工夫が凝らされています。落とされないように防衛側も必死、なんとかして落とそうと攻囲側も必死。それぞれの知恵や作戦や、それらを凝らした兵器なんかを思うとわくわくしますね。

プラスに変える

閉じ込められる、ということについて考えています。2010年のリメイク版の「死刑台のエレベーター」を見ていてそこで横浜の大きな観覧車が出てきたんですね。それで、観覧車に閉じ込められた話、あったよなぁ、とふと思い出しました。

あれは村上春樹の「スプートニクの恋人」でした。主人公(男)の好きな女の子は既婚の女性みゅうに恋をします。そしてそのみゅうは若いころ、フランスだったかイタリアだったか忘れてしまいましたが、どこかの国でアパートを借りて数週間だか数か月だかを過ごすのです。街には遊園地があって(来ていて、かもしれませんが)、それで観覧車があった。みゅうは夕食を食べに出かけて、そのまま観覧車に乗ったのです。ところが、観覧車は途中で止まってしまった。困ったみゅうは観覧車から自分のアパートを双眼鏡でのぞいてみます。別に何という目的があったわけでもないですが(だって自分が不在の一人暮らしの部屋をのぞく趣味のある人なんています?)ただそうしたんですね。すると、その部屋には自分と最近ちょっとうっとうしいな、と思っているフェルディナンドという男がいるのが見えるのです。

観覧車の中から、部屋にいるもう一人の自分を眺めるというのはちょっと想像を絶しますね。フィクションですけど、そこには意味があります。観覧車というのももしかしたら一つのキーワードなのかもしれません。

俗な話になりますが、閉じ込められるならエレベーターと観覧車、どちらがマシでしょうか。座席があるから観覧車でしょうか。それに観覧車は少なくとも気心知れた自分の知り合い、友人、恋人と乗るものですからまったく見ず知らずの人間ということはありません。それともぐらぐらするからエレベーターの方がまし、という人の方が多いでしょうか。

ある愉快な男の友達は、エレベーターの方がいいと言います。見ず知らずの女性と乗り合わせているときにエレベーターが止まれば恋のチャンスだというんですね。自分の男らしさや落ち着きのアピールポイントだというわけです。いやぁ、実にたくましい。その根性なら確かに生き残れるでしょうとも。下心を感じ取られたら女性に気味悪がられるかもしれませんけれど。どこに閉じ込められるにせよ、プラスの経験にしたいですね。できるものならば。